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SAP S/4 HANA カスタム分析クエリで「着地見込レポート」を作成してみた

はじめに

このブログではSAP S/4HANAのカスタム分析クエリで「着地見込みレポート」を作成した事例を紹介します。
ここでの「着地見込みレポート」とは基準日を軸として、基準日より前は実績金額、基準日以降は計画金額を表示したレポートです。
SAP標準では実績値と計画値は「計画カテゴリ」という項目で区別されており、1つの金額項目で表現することができません。
そのためカスタム分析クエリ上での工夫で対応してみました。

カスタム分析クエリとは

まずはカスタム分析クエリの概要を説明します。
SAP S/4HANA におけるカスタム分析クエリ(Custom Analytical Query)とは、一言で言えば「ビジネスユーザーやキーユーザーが、プログラミングなし(ノーコード)で独自の分析レポートを作成するためのツール」のことです。
S/4HANA のインメモリデータベース(SAP HANA)のパワーを活かし、リアルタイムなデータを多角的に分析するために設計されています。

1. 主な役割と特徴

標準で用意されている分析レポートだけでは要件を満たせない場合に、既存のデータソース(CDS ビュー)を組み合わせて、独自の切り口でデータを集計・表示するために使用されます。
運用時には各ユーザが自分のニーズに応じたレイアウトを作成することができます。
SAP ECCのときのクエリと同じようなイメージです。

  • 【ノーコードでの作成】

プログラミング(ABAP)の知識は不要で、ブラウザ上の Fiori アプリから設定を行うだけで作成できます。

  • 【リアルタイム分析】

抽出処理(バッチ)を待つことなく、現在の在庫や売上状況を即座に反映したレポートを確認できます。

  • 【多次元分析】

ピボットテーブルのように、行や列に項目を配置することが可能です。

2. カスタム分析クエリの設定手順概要

具体的には、Fioriアプリの「カスタムCDSビュー」および「カスタム分析クエリ」を使用して以下の設定を行います。

  • 【カスタムCDSビューの作成】

標準のCDSビューで要件を満たすものが存在しない場合、カスタムCDSビューを作成します。
使用するCDSビューを選択します。
必要に応じて結合するCDSビューを選択し結合条件を指定します。
使用する項目や、固定のフィルタ条件などを指定します。

  • 【カスタム分析クエリの作成】

データソースから必要な項目(売上日、得意先、製品、金額など)を選択します。
必要に応じ計算式を用いて新たな項目を追加します。(項目間の加減など)
どの項目を行に配置し、どの項目を列に配置するかを指定します。
データを抽出する条件となる項目を選択します。

着地見込みレポートのイメージ


実装事例

データソースとなるCDSビューは、アプリ「財務計画データ照会」で利用している「I_ActualPlanJrnlEntryItemCube」をベースとして利用しました。
このCDSビューでは「計画カテゴリ」という項目で、実績値(ACT01)や計画値(それ以外)の種類を区別できます。
標準で提供されるメジャー(数値項目)では、実地見込みレポートの要件である「1つの金額項目で実績値または計画値を表示する」が満たせないためここに工夫が必要です。

CDSビュー作成およびクエリの一般的な作成工程の説明は省略します。
CDSビューでは、シナリオを「分析キューブ」または「分析次元」を指定して作成します。
クエリでは、項目選択ビューで必要な項目を選択します。

まずは、メジャーの算定のために必要な「基準日」の項目を作成します。
「表示タブ」の「追加ボタン」から「ユーザ入力フィルタ」を追加します。

ラベルには項目テキストを、名称は任意のオブジェクト名、データ型は日付を選択します。

次にメジャーを追加します。メジャーとは金額や数値の項目のことを言います。
方針としては、以下の2つのメジャーを作成して、それらを合算するメジャーを作成します。
① 基準日より前の実績値を取得するメジャー
② 基準日以降の計画値を取得するメジャー
③ ①と②を合算するメジャー

①基準日より前の実績値を取得するメジャーの追加
 制限メジャーを追加します。

②基準日以降の計画値を取得するメジャーの追加
制限メジャーを追加し、以下の画像イメージのように設定します。
ポイントは画面下部の固定値の部分です。
計画カテゴリ!=ACT01(実績値)
転記日付>=先ほど追加した基準日の項目
※計画カテゴリを複数保持して運用するため、ここでは実績値ではないという指定のみとし、
   フィルタで計画カテゴリを1つ指定する運用としました。

③①と②を合算するメジャーの追加
計算メジャーを追加します。

ラベルには項目テキストを、名称は任意のオブジェクト名を入力します。

以下の画像イメージのように設定します。
計算式で先ほど作成したメジャーの合算を設定します。

さいごに

このブログではカスタム分析クエリで「着地見込みレポート」を作成した事例を紹介しました。
CDSビューに要件が合う金額項目がない場合、「制限メジャー」「計算メジャー」などを利用して追加することが可能です。
ただし「計算メジャー」で参照可能な項目は、メジャー項目のみのため複雑な条件を指定することができません。
このあたりはSAPの今後のアップグレードに期待したいと思いました。

BeeXではSAP S/4HANA Public Cloud Editionの拡張開発の取り組みを実施していますので、ご検討中のお客様は是非、お気軽に相談ください。